オーバーリーチングは,心理的影響や生理的不適応の兆候の有無によらず,オーバーリーチングを通じたパフォーマンス向上のために組まれたトレーニングや,質や量を変えることでアスリートを現在のパフォーマンスレベルからさらに上げるトレーニングのキモである.しかし,適切な回復期間なしに高い強度を維持したトレーニングをし続けると,オーバーリーチングは容易にオーバートレーニングに変わりうる.アスリートに長期間高い負荷をかけ続けると,生理的または心理的能力や喜んで取り組む気持ちの低下につながり,結果として説明がつかないパフォーマンスの低下や,慢性的な疲労,トレーニングや競技におけるRPE(自覚的運動強度)の増加,睡眠障害,病気(おもに上部気道の感染症),栄養習慣の乱れが生じる.